くもり時々晴れの日曜日。一日中、吹雪だった昨日とは全然違います。昨日は、新しいアシスタントさんの初めての長時間夜勤の日でした。昼食に作ってあったパエリアと、夜にはそれに合うおかずとしてバーニャカウダーをアシスタントさんが提案してくださったので、素直な私はそのメニューを採用。ソースは、おろしニンニクとマヨネーズ、そしてオリーブオイルで作ることができます。作り方を知らなかったので、これで他のアシスタントの時にも作ることができそうですよ。パエリアは、クックパットのレシピを参考にしながら、炊飯器で初めて作ってみました。水分が多かったせいか、お米が柔らかくなりすぎてしまい、夜にフライパンで焦げ目がつくまで炒めてもらいました。
さて、今回は「こんな夜更けにバナナかよ」の映画について書きたいと思います。
筋ジストロフィーで多くのボランティアのヘルプを借りながら、施設や病院ではなく、一般の住宅で一人暮らしをすることを選んだ鹿野さんの実話に基づく映画です。北海道札幌市で20年以上も前からすでに自立生活を始めた方です。私は札幌に住んでいましたが、私が10年前に障害者運動を始めた時にはお会いできないまま、亡くなられました。鹿野さんのボランティアに携わったことのある方や、障害者運動を一緒にやってきた方などが、私の身近な人にもいるので、勝手ながらに少し親近感があります。
皆さんは、障害者を題材にしたドラマや映画にどんなイメージを持ちますか。私は、「障害を乗り越えながら頑張っている障害者」が周りの助けを借りながら、輝いて生きていくというストーリーです。
しかし、「障害者もひとりの人間である」ことから切り離された映画は、もう飽きてしまいました。
日本で作られた映画の多くは、障害者をPity(哀れみ)の対象として描き、苦難を乗り越えていく様子に感動させるものだと思っています。その逆に、障害者をHero(英雄)として賞賛するような映画もあります。私は、主人公を哀れみや英雄として描く映画そのものは、あってもいいと思っています。もちろん、色々な映画のうちの一部に、そういった題材のものはあって良いと思います。
しかし、なぜ、映画の中で、車いすに乗っている女性はいつも自信をなくしているのか、いつも障害者は何かに挑戦していかなければならないのか、障害者を他の人との生活と切り離して描かれるのかといった疑問を持っています。私は、脇役に障害者がいることや、本当の障害者が俳優となって演じることが、ごく自然になってほしいなと思います。

「こんな夜更けにバナナかよ」は、日本の障害者を題材にした映画の中で、一番面白いと思いました。実は、11月のいちご会で前田哲監督が講演されていた時に、映画を作るに至った経緯などのお話を聴きました。「鹿野さんのドキュメンタリーではなく、エンターテイメントに作り上げて、多くの人に見てもらいたいと思った」と語る監督。さらに、他のイベントで2度目の話を伺った時は、自身の若い頃に偶然にも障害者と遊んだ時に、悔やんだことがあり、それも映画を作る原動力になったと話していました。
その原動力が関係しているかどうかはわかりませんが、「障害者もひとりの人間として生きている」ということが、細かい描写の一つひとつから感じました。
一見すると、男女のボランティアの恋愛を軸にストーリーが(最後まで)展開しているように見えます。しかし、介助が必要な障害者がプライベートをさらけ出す生活(ヘルパーやボランティアにひとつひとつ声をかけて、水を飲む、かゆい背中をかく、恋文を書く→あれ?古風な名前しか出てこない。)、進行性の病気と付き合っていく中での人生の選択(人工呼吸器をつけるか、入院するか)をする鹿野さんのストーリーの軸が、絡み合っているように思いました。
そして、ボランティアが、むしゃくしゃしてコップを床に叩きつけたい鹿野さんの気持ちに並行して、鹿野さんの動かなくなってきた手の代わりにコップを思い切り叩きつけたり、鹿野さんとボランティアが言い合う場面では、声が出なくなった鹿野さんと舌打ちだけで争ったりと、細かい描写がありました。
その他にも、鹿野さんの男性として好きな女性を抱き寄せたいけれど体が動かない悔しさ、高畑充希さん演じるみさきちゃんの「同情じゃなくて、本当に好きになるかもしれないじゃん」と、言葉に表すのは難しいけど自分の気持ちに手を当てて出てきた言葉など、役者の演技から滲み出る人物の気持ちがじわっと心に届く感じでした。
ストーリーは実際とは異なる部分は多いと思いますが、福祉について知らないよと言う人も、障害者と会ったことがないと思う人も、ヘルパーやボランティアをやったことのある人も、障害者も、子どもにとっても、見やすい映画になっていると思います。
そして、伝えたいことを表現している映画ですし、試写会で語る大泉洋さんのyoutubeを見ていると、鹿野さんの生き方に影響を受けながら、しっかり演じられたのだと思いました。
私の知っている方々もエキストラで出ていたので、私も出たかったな〜。
DVDが出たら購入しようと思います!