障害があって手を思うように使えない、病院に入院していて外に出ることがない場合、後回しにしてしまうことの一つは「ヘアスタイル」だ。一般的にも、自分の納得のいくヘアスタイルを朝の外出前にセットするには、相当のストレスを持つ。前髪のうねりが嫌だ、一センチの髪と髪の間の隙間が気になる、パーマをうまくスタイリングできないなど、女性のみならず、男性も鏡の前で気にするほどだ。しかも、地下鉄のエレベーターや駅などにある鏡で何度もチェックしてしまう。
私は、夜のシャワーの後の髪の毛のブローや、朝のヘアスタイルのセットは、自分でできないために、ヘルパーさんに頼まないとならない。一人とか二人くらいなら、同じように技術を伝えられるかもしれないが、13名以上いるので得意な人と不得意な人が必ずいる。
そのため、美容室で髪を切るときは、どの人でもセットしやすい髪型にしてもらったり、ブローの仕方を美容師さんがやっているところを動画で撮っておいたりする。そうやって、外出するときに、自分の好きなヘアスタイルで気分良く出かけられるのだ。
10代に病院や寮生活をしていたころ、職員の人が入浴介助をしていたのだが、入浴後のヘアドライヤーは、ヘアドライヤーの担当になった看護師一人が、順番に並んでいる私たちの髪を急いで乾かす方法だった。なので、そういう風に乾かしたら頭が爆発してしまうなどの髪のくせの話なんてしたら、「空気を読みなさい。」「わがまま言うんじゃない。」と言われたり、態度に出してくる。
この前、病院の通院で待合室にいたときに、車いすに乗って患者用の病院着を着た人が、顔を下にうつむいたまま髪の毛をボサボサにして通っていたのを見ると、自分の入院時代を思い出した。しかも、その車いすを押している職員は若くて、まつげをビューラーで巻き化粧もバッチリした若い女性だった。そういう光景をみると、複雑な思いになる。この状況を普通だと思わないようにしたいと思った。
ヘアスタイル?ヘアメンテナンス?そんなことより考えないといけないことが山ほどあるよ。
という声が聞こえなくもない。本当にそうなのだろうか。今日はそんなことを話した。