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「秒」を生きる〜玄秀盛さんのことばから

明日、NPO法人札幌いちご会で、講演会「たった一人のあなたを救う〜新宿歌舞伎町に『日本駆け込み寺』をつくる〜」の司会をすることになった。講師は、玄秀盛(げん ひでもり)さんという方だ。

玄さんは、大阪で在日韓国人2世として生まれ育ち、あらゆる壮絶な体験を経た中で、自身の社会的な役割に目覚めた。それが、「たった一人のあなたを救う」という理念で、新宿歌舞伎町で始めた「日本駆け込み寺」だ。刑務所出身者の社会復帰支援を始め、家庭内暴力、引きこもり、多重債務、自殺願望など、被害者・加害者を問わず、いろいろな背景を抱えた人々のあらゆる相談に、24時間365日対応してきたという。

公益財団法人日本駆け込み寺では、Yo-Ro-Zuという冊子を発行している。貧困、障害、性の社会問題など色々な角度から、私たちの生活や人生が根深く脅かされる社会の壁を、率直に発信している貴重な冊子だと思う。そこで語られた玄さんのコラムにあった「『秒観』という人生観」から考えたことを、私なりに書いてみたいと思う。

玄さんはコラムの中で、「『人生をいかに生きるか』という視点よりも、『あなたの目の前の問題を超えていくにはどうするのか?』のほうが具体的な行動が生まれやすい。『今』何をするか、何をしたくて自分には『秒』が与えられてるのか、と考える課題が一人ひとり与えられてるんや。」と書いている。

私は、「今、この瞬間に流れている秒」の感覚を失ってきたことが何度もあったかもしれないと思った。普通小学校ではやっと障害者の入学を受け入れてくれたので母も私も必死に頑張って緊張状態が続いた、高校の時は養護学校から自由に外に出られなかったので、卒後の自分の人生を見出せず摂食障害のようになった、傷つけられそうなヘルパーから離れることができずに自律神経が狂い怯えていた。どれも、自分ではコントロールできないことに苦しんでいた。そして、自分の体や心を痛めてきた。

逆の立場で相談員として働くようになったときに、電話の先で、ヘルパーを頼めないから病院に行けない、お金がないからどうしたらいいか、近所の人との付き合いが苦痛でどうしたらいいかわからないという相談がたくさん舞い込んでくる。その人の「今」を生きられるように、手を貸すことの難しさを目の当たりにした。

しかし、「今」はずっと続いていて、目の前の問題に着実に対応して、自分一人ではできないことを周りに頼んで、玄さんのいう「応援団」を作っていくことで、試行錯誤しながら人生を築き上げていく。そういった姿になっていった人々も、相談員をしていた頃に見てきた。そして、私自身も、「今」目の前にあることをやって、生きている。

「秒」を生きるというと、一瞬一瞬がとても大切に思えるから不思議だ。

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