札幌はだんだん寒くなってきた。上着とストールがないと寒さで体が縮んでしまうようだ。そんな中、部屋の後片付けが順調に進んでいる。洋服ダンスも、クローゼットも、引き出しも余白があるほどスッキリしてきた。あるYoutuber(サチコ go greenさん)は、持っていた洋服を手放す時に、なんで着なくなったのかを呟きながら整理すると効果的と話していた。「可愛い服で気に入っていたけれど、襟周りが広すぎて、肩のあたりがずれて格好が悪かった」とか、「今の年齢はもう着ない服だ」などを呟いた。私の場合は、ヘルパーさんが否が応でも聞かされることになる。
片付けをしていると、時々懐かしいものを見つける。これは、ヘルパーさんに連絡事項を伝えるためのホワイトボードに貼るマグネットだ。マグネットにはいつも伝えたい内容が書いてある。
「連絡事項を書くコーナーです。次の版の方や特定の方への連絡の場合は、ホワイトボードのペンで書いてください。全員の方への連絡の場合は、付箋に書いて貼ってください。」「終わった作業のプレートは、はがしてください」「浴室掃除、台所掃除、洗面所掃除、居間・廊下掃き」「燃えるゴミ、ベランダの箱に入っています」「残り湯バケツあり」「ノートを見てください」
20代前半の頃は、1ヶ月に来るヘルパーさんは30名くらいだったので、生活するだけで忙しかった。ヘルパーさんは決まった時間に毎日来るので、やることがないと逆に手持ち無沙汰で大変だった。もちろん、生理現象のトイレや、ベッドへ横になることなど必要なケアが受けられるようにいてもらっているわけだが、連続してトイレに行き続けているわけではない。空いた時間で、効率よく生活のメンテナンスをしてもらっていたので、掃除をどこまでやっているのか、ゴミはどこに溜めてあるのか、他にやって欲しいことはあるか、などをホワイトボードに書いておいていた。細切れに一部だけ来るヘルパーさんにもわかりやすかったと思う。

今は、だいたい13名ほどのヘルパーさんが来ている。一人暮らしをして10年以上経ったので、その間にも生活スタイルは変わっていった。仕事を始めるようになってからは、掃除のことなどを完璧にしようとは思わなくなった。普通の人だって、細かいところまで掃除をしようと思う気持ちの余裕はなかったり、物が散乱しておいてあったり、食器もまずは水につけておいて後で洗うこともある。
10代の頃は、障害者のみが住んでいる寮で生活をしていて、決まった時間に掃除をして、後片付けをすることになっていた。必ず寮の先生が見回りに来ていた。寮の外に出て自由に遊んだり、他の学校の生徒との関わりがあったりしたら、「ほんと、面倒だよね。1日くらいやらなくてもいいのに。」「私の家なんて、そんな掃除してないよ。」なんて、マクドナルドのポテトを食べながら、愚痴をこぼしていたに違いない。
ホワイトボードを作っていた時期は、ヘルパーさんに黙って何もせずに待ってもらうのが苦痛でもあったため、なんとか空気を循環したいという思いでいたのかもしれない。
今は、そのようなホワイトボードは要らないので、処分をすることにした。気まぐれに掃除を頼んでいる。ヘルパーさんにとっては、仕事に来たらやることが決まっていた方がいいと思う人も多いかもしれないが、日常の生活は、もっとゆったり気まぐれに時間が流れているはずである。ヘルパーさんにとっては仕事場、住んでいる本人にとっては毎日の生活。その間の違いをうまく埋めるために、私の場合は、ホワイトボードを用意をしていたのであろう。