本というものに一気に愛着が湧いた。書籍修繕という仕事が知られていない中で、次世代にその魅力を伝えたいという筆者の思いが、そこかしこに散りばめられている。書籍を修繕する仕事にも関わらず、筆者個人の本への扱いは人より「最悪」というくだりが、私の心にヒットした。遠慮せずに線を引くし、ページに思い切り折り目をつけて印にしたり、厚い本は半分に割いてでみ持ち運ぶ。新品の本はわざとリュックの中で揉みくちゃにされてから読み始めるという強者だ。それが筆者がいう「本への愛し方」だという。
私は、筆者の「本への愛し方」に親近感が湧いた。私の周りにこの本のことを話すと、ある人は「本を浴室に持って行って、お湯に浸かっているときに本を読んでいたら、寝落ちして落としちゃったことがあったわ。一所懸命乾かしたら、一回濡れた後の乾かした方がページがめくりやすくなってたよ。」と話していた。
最近、大切な人の語り聞きが記されている本が、カビだらけになってしまった。思わず言葉が出なかったし、出たと思ったら「ショックだー!」と叫んでしまった。予想外の本の変わりようにショックであり、私にとって大切な本だったんだと改めて思った。
筆者自身の本の関わりは、本を自分の生活に馴染ませることから始まるのではないか。そんな筆者が依頼者との歴史が染み込んだ本の修繕に携わる。その一つひとつのエピソードは、本当に面白かった。