「障がい」とは

「障害者の権利」は無視できない大切なこと

「障害者も、障害のない人と同じように生活できる社会を実現する」
「私たちのことを、私たち抜きで決めるな」

このふたつのメッセージは、「だれもが障害者になっても、障害のない人と同じようにどこでだれとどのように暮らすかなどを自由に選ぶことができ、いつでも・どこでも交通機関や移動手段を使うことができ、生活や教育、就労などに関係するさまざまな場所や機会を得られるようにする」ことを意味しています。国際的にも(世界でも)、みんなで守るルールとして規則をまとめました。それが「障害者権利条約」です。(←まずリンクを開いてください。たくさんの分野でルールがあります。)

みなさんは、障害者の暮らしのことを説明できますか。家族や知り合いに障害のある人がいたら、「障害者はね…」と説明できるのでしょうか。答えは、NO!です。一番わかりやすくて本当のことを説明しようとしたら、「障害のない人も、一人ひとり違うように、障害のある人も一人ひとり、そこにいる環境や本人が必要としているもの・ことは違う。だから、一人ひとりと言葉を交わして、聴き合うことが大事です。」と私は答えます。

日本では(もちろん日本だけではないと思いますが)、子どもの時から障害のある人と障害のない人が分けられています。学校で一緒に学んでいないということです。だから、歩けない人や耳の聞こえない人、目が見えない人、見た目ではわからない苦労を持っている人などが何に困っていて、逆にどんな力が鍛えられているか、今の社会がどうやって映っているのかを想像するという経験がないまま、多くの人は大人になっていきます

しかも、障害のない人も「健康な人が一番だ」とか、「女・男らしくしなさい」とか、「頭が良くて、体がやせていて、かわいい・かっこいい人が理想だ」とか、勝手にカテゴリーが作られています。それを「カテゴライズ」されたと言います。みんなはそれに合わせようとしています。そんなことないでしょうか?人とくらべて、特定の他人のことを悪く言ったり、自分に自信をなくして生きる力まで失ったりしてしまうのは、いろいろな生き方がある・できるということを認められない環境や社会にいるからです。

これまで想像したことがない人も多いかと思いますが、みなさんが生きづらいと感じていること、「みんな我慢しているから仕方がない」と思っていることの延長に、「障害者が直に感じる生きづらさ」があるのです。我慢できるうちは、なんとか生きていけるかもしれないけれど、少しでも自分の体の状況や環境が変われば、今までの生活が守られなくなってしまいます。つまり、「障害者」という理由で、障害のない人がすぐに利用できるもの・ことに、すぐには利用できない・まったく利用できないということがあります。それを「障害のない人と同じように生活し、必要なもの・こと・サービスにアクセスできない」と言います。

そのようなことが起こっているのは、最初にお伝えしたメッセージの内容と逆のことが起こっているからです。

障害のある人のことを、障害のない人が決めている

これは、男性・女性、子ども、高齢者、がん患者、セクシャルマイノリティ、日本語を母国語としない外国人などにも言えることです。(「障害」という言葉を、それぞれ違う背景の人を表す言葉に変えてみてください。)

さて、前置きが長くなってしまいましたが、世界にはさまざまな人権を守るためのルール(人権条約)があります。その一つが、「障害者権利条約」です。国連で採択(みんなで守ろう!という決定)されたのは2006年。つい最近ですね。そして、2014年に批准(自分の国の人たちにも保障して守りますと国が決める)をした日本は、この前の8月22日、23日のスイス・ジュネーブの国連の場で、日本で本当にその条約を守っているのかを世界各国の委員から質問をもらい、審査されていました。

障害者権利条約は、最初にお伝えしたように、

「障害のある人も、障害のない人と同じように生活ができる社会の実現」のための世界が守るルールです。

それは、「障害のない人と同じように歩けるようになる」という医療の考えではなく、「地元の学校に通えるように、車いすトイレやエレベーター、スロープなどをつける」といった環境を整えて、みんな同じスタートラインに立てるようにするということです。それを「社会モデル」と言います。今の例は、車いすユーザー(利用者)の状況でしたが、それぞれの状況によって、必要な整備は似ているものもあれば、違うものもあります。

そういったあらゆる整備を、日本では障害者権利条約を守って、国内でもやっているかどうかが審査の重要なポイントです。政府報告とNGO側のカウンターレポートをもとに、障害者権利委員会の委員が質問し→日本政府が回答する、そしてまた委員が追加の質問をし、日本政府が回答します(これを「建設的対話」と言います。お互いに同じ土台で質問し合うこと。子どもの時から必要なことです)。そして、改善するべきことなどが審査で明らかになり、次の報告(4年ごとに報告書を出すらしいです)で、必ず進捗状況(どこまで進んでいるか)を知らせなければなりません。

日本の政府と障害者権利委員会の世界各国の委員との話し合いは、下のリンクの国連のホームページから一部始終見ることができます。(日本語で聴く場合は、動画のすぐ右下の地球のマークよりOriginalを選んでください。)

障害者権利条約の日本の審査(2022年8月22日)

障害者権利条約の日本の審査(2022年8月23日)

審査の中でChapter1とか番号が聞こえますが、障害者権利条約の章のことです。下にもリンクを貼りますね。

障害者権利条約

障害者権利条約のことや、日本が批准したあとの動きなどを知りたい方は認定NPO法人DPI日本会議の下のリンクを見てください。動画でも詳しく解説されています。

障害者権利条約の完全実施

ここからが私の感想になります。まず、日本の政府の報告や、質問の回答を聞いていると、法律で定められていることなどの規定の説明が中心であり、具体的な中身がまったくわからなかったことが残念でしかたがありませんでした。一方で、世界各国の委員からは「障害者の権利を守るために具体的にやっていることは何か」「施設に入所している人が今もなお多いのはなぜか」「『心神喪失』という言葉が法律に明記されているが、そこから人権侵害が生まれている。どう考えているか」など、すべて具体的な回答を求める質問だったのです。それでも、具体性に欠ける、乱暴に言うと口を濁すような回答が多く、どうしてそういった質問がされているのか理解していないように感じました。

実は、障害者権利委員会へ提出するのは、政府だけの報告書だけでなく、NGOなどの報告書も提出できます。日本の大きな障害者団体の一つであるJDFのパラレルレポートも少し見てみてください。

JDF 障害者権利条約 日本の総括所見用パラレルレポート

審査の中での世界の質問は、日本の障害者団体のレポートの内容と、話し合うべきポイントが同じだと思いました。2日間の審査は、全部で6時間くらいなので少し長いです。パラレルレポートを読んでから審査を見ると、関心を持って見られると思います。

私は、小学校に上がる前に「あなたは養護学校しかない」と言われてから、これまでの間ずっと「人として生きるために『意識』しないと、周りに流されて施設で一生暮らすことになる」と恐怖感がありました。

例えば、教育について、国連の審査の中で、日本政府は「障害のない人と同じ学校を選べるようになった」「合理的配慮(その人が必要としていることをできる限り整備する)がありながら、知的障害などの方は支援学校(前の養護学校)を選ぶ(支援学校が多いのはなぜかという質問に対する回答)」などと言っていました。でも、実際は「学校に介助者が配置できない」「医療的なケアが必要な子への看護師の派遣が十分じゃない」「学校では一人ひとりのレベルに合った先生の補充・配置がされていない」という現状があります。そう言った現状があるのに、「選べるようにはしている」「その人が選んだ」ということだけ述べているだけなんです。どうして、そうなるのか?情報がきちんとないからじゃないか?学校の体制ができていないからじゃないか?ということには触れず、「〜に定められています。〜を実施しています。」しか話しませんでした。実際の現場の声がいっさい無視された感じでした。

しかし、世界からの質問は、最後まで具体的な取り組みや、「まだ残っている課題」、どう改善しようと考えているかを問い続けていました。「できていないこと」が必ずあるはずなのに、まったくそこに触れないのはおかしいし、不自然すぎます。今の日本の姿をそのまま明らかにしたような感じでした。

以上が私の個人的な感想です。

ここでしっかり伝えておきたいのは、現場レベルで、社会や福祉の改善に向けて協力してくださっている政府職員さんや、自治体職員さん、議員さん、専門職の方々、家族や友人、障害者団体、そして市民の方々がたくさんいるということです。そして、市民として、障害がありながら生活している人たちがあきらめず、人里離れた施設ではなく、家で、その近所の人として、生活していることが土台づくりの大きな材料と言えるでしょう。

日本政府には、そのことをしっかり伝えていただきたかったし、まだまだ途中なのだから、課題を正直に報告して、今後の改善について、堂々と世界の前で話せる代表であってほしかったです。

私は、障害者権利委員会の委員に「私たちも見ているよ。」と背中を押されて応援された気持ちになりました。これからも、周りの人と一緒に、そして自分もみんなも堂々と生きられる環境を作っていけるようにがんばりたいと思います。

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