本・映画・作品の感動

ちつのトリセツ

「自分の体のことをどれくらい考えていますか。」こんな質問をされたら、「お腹が出てしまっているのが嫌だなぁ」とか、「顔にニキビができたぁ」とか、「腕や脇に毛が生えるからそりたい」とか、そんなことを考えていますと答えてしまいそうです。

最近、これまであまり気にしてこなかった「膣(ちつ)」のことについて、もっと大切にしなきゃなと思うようになりました。そのきっかけをくれたのが、この『ちつのトリセツ』という本です。

「女性の体(女性器がある体)には、10の穴があります。どの穴もつながっていて、ケアをしなければいけません。」というお話から始まります。それは目、鼻、耳、口、尿道、肛門、そして膣(ちつ)。今、パートナーがいてもいなくても、どんな年齢であっても、ちつをあたため、マッサージをして、自分の体を受け入れ、リラックスすることによって、あらゆる体の調子が良くなってきたり、肌や筋肉にハリが出たりするそうです。「自分のちつに指を入れてマッサージするなんて、したことがない。緊張する…。」という筆者が、ちつに詳しい助産師さんに聞いていくというシナリオなので、初めての人にも読みやすいと思います。

私は、この本を読んでから、2つのことを思いました。一つは、「自分だったら、どうやったらいいだろう?」という疑問と、「自分の体について、今までどう思ってきただろう?」という振り返りです。

日常生活に介助が必要な私は、自分の体のいろいろなことを考えて、ヘルパーさんにしてほしいことを伝えるのに精一杯。ちつのことまで頭がいきませんでした。体に負担のない生活をするために、車いすに座っている姿勢や、ベッドでの足や腰、肩や頭などの位置を伝えたり、入浴ではどれくらい力を入れて体や頭を洗ってほしいか、足のマッサージのことなどを、ヘルパーさんと会話でやりとりしながら模索していきます。ヘルパーさんが代われば、また一から伝えていくこともあります。

ちつに近いことといえば、「おしっこのあとの拭き方」「生理中の拭き方」「ウンチのあとの拭き方」で、これもしっかり伝えなくてはいけないときもあります。お股には3つの穴があって、前から順番に、尿道、膣口(ちつこう)、肛門なので、拭くところを間違えたり、後ろから前に向かって拭くと、バイキンが前の二つの穴に入ってしまったりするからです。

そんな「お股の事情」についてって、他人と話すことはほとんどないと思います。ましてや、家族でさえも。だから、ヘルパーさんの中には、仕事で初めて意識し始める人もいます。私も、もし人に頼まずに自分でできたら、ちゃんと意識していなかったかもしれないですね。

私の経験からですが、体が不自由な人の事情をお話ししながら、そもそも「自分の体を受け入れる経験が難しかった」というお話をしたいと思います。体が不自由な人は、かならずといっていいほど、「医師や看護師、理学療法士などの医療で、たくさん自分の体を観察されるため、『医療の対象の体』として意識してしまう」といったことがあります。足はどれくらい伸ばせるか、体は曲がっていないか、などを評価されたり、「健康体を目標にリハビリをしていく」といった体の機能が良くなることを求められたりするのです。

そこから、障害者人生がスタートするといっても、言い過ぎではないと思います…。だから、自分の体そのものを受け入れるという気持ちからは、ほど遠いんですよね。

さらに、おしっこやうんちでさえも「汚いもの」と教えられてきましたから、自分のものはあまり見てこなかったし、他人に介助されるときに「汚い」と思われないかという恥ずかしさがありました。実際に、施設の職員に、おしっこやうんち、経血(けいけつ:生理中に出る血)を「汚いもの」のように扱われることもありました。(手袋をつけるのは必要なことなのでいいのです。問題は、態度のことです。)だから、それを耐えるだけで精一杯でしたし、お股のケアという考え方さえも思い浮かばない状況に長くいたことになります。

できれば、もっと早くからこの本に出会っておきたかった、というのが本音です。

さて、その次の課題は、「自分のちつをどうやってケアしていけるか」ということです。自分の体を含めて、優しくなでたり、オイルマッサージをしたりするには、体が不自由だとどうしたらいいのでしょうか。これについては、アドバイスを著者の方に聞いてみようと思っているところです。

日常生活のどの介助もそうなんですが、ヘルパーさんにどこまで頼めるかをヘルパーさんとの関係作りの中で探っていきます。もちろん、ほとんどのことは「頼まないといけないこと」なので、「頼むか・頼まないか」というどちらかを選ぶというよりは、「どうやって頼んだら、頼まれ・頼みやすいか」というHow to(方法)のほうが大事です。

「ちつのケア」については、デリケートの中のデリケートな話。

でも、この本を読んでホッとしたところは、「無理をしない」というメッセージです。まず、お腹をなでるだけでもいい。それを知って、私がまずやったことは、「自分の手を自分のもう一方の手で温める」でした。それをするだけで、「私って、こんなに体が冷たかったんだ」ということに気がついたんです。

そういった小さい気づきをしていくことが、一歩なのだと思いました。

 

また、進展があったときに、このテーマについて続きを書きたいと思います。

 

 

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