あいうえおエッセイ

離陸しそうな瞬間

離陸の意味は、陸を離れること。この言葉は、よく飛行機という言葉と一緒に使う。「飛行機が離陸します。」っていう文章がすぐに思いつく。飛行機が離陸するとき、どんな心境だろうか。ワクワク?ドキドキ?怖いなと思う人もいれば、楽しみだと思う人もいるし、何も思わない人もいる。

私は、飛行機に乗り慣れていない頃は、離陸するときはいつも身構えていたが、今は「やった!」と心の中で小さくガッツポーズをする。離陸する前は、飛行機がまっすぐ走れる道まで動いて、そこまでたどり着いたら、エンジンが急にかかったようにスピードを上げて道路の上を走り出す。どちらかというと、離陸するよりも、急発進していくときが一番ドキドキする。その急発進して走ることがないと、ふわっと道路から離れて浮き始める瞬間の喜びは感じることはできない。止まっている状態でいきなり浮いたら、あれ?と驚いてしまうだろう。

でも、ゆっくり歩いていく中で、途中でふわふわと上がって、浮いてきたら、それはそれでおもしろい。気づかないうちに心が軽くなったり、行動も軽くなったりすると、周りがたとえ変化しても、そんなに自分の気持ちに影響しなくなる。むしろ、心も体も軽くなったあとではなく、「あれ?軽くなっていきそう」と思える瞬間に出会えたら、かなりハッピーである。

飛行機のように急発進してから離陸しても、ゆっくり歩いている途中で離陸しても、その「離陸しそうな瞬間」が貴重なのだと思った。私は若い頃は、急発進してスピードを出さないと離陸できないと思っていた。今になってようやく、自分のペースで進んでいく中で離陸することも大事なんだということに気づいた。よくよく考えると、急発進することは体力があればできるし時には大切だが、進む方向を修正することが難しい。ゆっくり歩いて離陸しても、その先もゆっくりだから、風向きによって方向を変えたり、向こうからの風の抵抗は弱くて済む。こちらの方が柔軟に動けるかもしれない。

どちらにしても「離陸しそうな瞬間」は気持ちがいい。その瞬間を逃さないよう、毎日小さなことでも良かったことに気づくようにしていきたい。

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