あいうえおエッセイ

二兎を追う者は、二兎の奥深さを知る

「二兎を追う者は一兎をも得ず」。今年のおみくじの仕事運で書いてあった。同時に二つのことを得ようとしても、結局どちらも得ることができない、という意味だ。あれもこれもとやりたがる性分(しょうぶん)の私は、いろいろなことをかじっては、あまり長続きしない。それを自分の欠点だと思っていた。編み物、パズル、油絵、水彩、クロッキー、カヌーこぎ、演劇のワークショップ、ボイストレーニング、プール、英字新聞を読む、IPadでお絵描き、いろいろなアプリを試すなど、全然関係ないことまで手を出してしまう。そして、結局、どれも続いていないので、二兎どころか、10以上もやったら、どれも得ていないということだと思っていた。

でも、いろいろと手を出すうちに、自分がどんなことに興味を持っているのかを知るようになってきた。編み物は、編んでいるときの糸が他の糸とうまく絡んでいくのが好きだし、カヌーは、お尻などに感じる水面のゆらゆらが気持ちがいい。絵を描くときは、自分が何を描こうとしているのかが最後までわからないから楽しいし、演劇やボイストレーニングは、自分の体全体をどう活用していくかを考えるのが楽しいと思った。

それぞれのことが、私とどう共鳴しているか?が感じられるから、いろいろなことをしたくなってしまうのだと思う。何かを得たいという気持ちでやっているわけではなかったのだ。強いて言えば、私は何者なのかを知りたかっただけだった。私にとっては旅みたいなものだ。

その旅をしていくうちに、いろいろな人と出会い、それぞれの人の生き方や思いに触れることができた。そして、一度辞めたことをまたやり始めたりして、また新しくスタートすることも出てきた。最初は、夢中になっていろいろなことをやり始め、その後に「これでいいのか」と不安に感じる長い期間があった。それでも、「何かをやってみること」を続けていくことで、一つのことの奥深さが見えてきたような気がする。

こうして、私は、文字を連ねて、経験や命を吹き込んでいくことをし続けているのだ。

 

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