手を合わせて、いただきます。日本人の食事前の作法だ。私は手を合わせられないから、心の中で手を合わせている。今から私の五臓六腑(ごぞうろっぷ)に入って、私の血となり肉となる食物(しょくもつ)に感謝する。
いただきますの作法を忘れたときは何度もあった。そんなときは、決まってストレスが溜まっているときだった。ストレスがたまっているとすぐお腹がすく。なぜなら、前の食事のときに早食いをしたからだ。それもストレスが原因だと思う。
手を合わせて、ごちそうさま。私の五臓六腑に入ってくれてありがとう。食物を作ってくれた人や調理をしてくれた人にも感謝できれば100点満点である。でも、人はそんなに完璧ではないから、そこまで気が回らないことの方が多い。この場を借りていつも感謝していると伝えておこう。
朝、昨日の晩の油物で胃がもたれたので、朝食は緑茶でお茶漬けにした。茶碗(ちゃわん)を一つだけ、お盆に乗せた。食べ終わったあと、緑茶を茶碗にもう一度注いだ。ほろ苦いお茶が喉を通ったあと、茶碗を見ると、きれいに渦(うず)を巻いたデザインの底が私を見ていた。茶碗に向かって手を合わせてごちそうさまでした。
