あいうえおエッセイ

いつのまにか70年

いつのまにか2021年ももう少しで終わろうとしている。
きっと多くの人が「今年も恐ろしいほどに早いな〜」とつぶやいているだろう。
関西に引っ越してきたのが、つい昨日のことのようだし、25歳の私も昨日の私のようだ。
20代から30代にかけての10年は、光ファイバーのように高速だ。

先日、東京キューバボーイズとアロージャズオーケストラのライブを聴きに行った。
どちらも結成してから70年ほどのプロ演奏家の方々だ。

70年か。

当たり前だが、10年を7回かけている数字だ。
生まれて初めて、ジャズとラテンの演奏とコラボレーションを体感した。
幕が開くのと同時に、迫力のある演奏が始まった。

私は、始まった瞬間と、観客の拍手とともに終わった後の余韻が好きだ。
演奏中は「ずっとこの演奏が終わらなきゃいいのに」と願うほど楽しかった。
だからこそ、始まりと終わりが好きなのかもしれない。
始まらないと感動もしないし、
終わらないと「また次も聴きたい」という楽しみがなくなってしまう。

70年の月日は、観客の年齢層にあらわれていた。
どちらを見渡しても、70歳を超えた先輩の方々ばかりで、
若い人を探そうとすると目を凝らして隅々まで見渡さないと見つからない。
きっと、おじさま、おばさま方は、今の私くらいの2、30代に
ジャズやラテンを聴いてこられたのだろう。

熱狂的な演奏が繰り広げられた後、
幕が降りてからアンコールの手拍子が会場中に響き渡った。

幕が再び開くと、ゴージャスなクリスマスソングが。
そしてハンサム演奏家がいきなりソロで歌い出すと、
おばさまが望遠鏡をカバンから取り出す。

本当に終わってしまい、幕が閉じ切るまで、
多くの観客が手を高く挙げて演奏家に向けて振っていた。

圧巻。終わって、また明日が始まる。

2000人近くの観客がいそいそと会場を後にしている間、
隣のおじさまが「どこまで行きはります?」と声をかけてくださった。
ちなみに、私はどこかで出会いがあるかもしれないとおしゃれをしていたから、
声をかけられて、目標は成功したなと安堵(あんど:ホッと安心)した。

良いクリスマスだった。

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