「体が不自由でかわいそう」そんな言葉を幼い頃から何度も言われてきた。大人になって、講演会で障害者の生活について話をするたびに、「多くの人が気づかないうちに同じ言葉を使ってくることに違和感を感じている」と話してきた。
私は途中まで、その言葉は健常者にだけ言われてしまうものだと思っていた。ある日、私が働いていた福祉施設で、私が事務をしていた部屋の同じ建物内にある生活介護に通うダウン症の方に、私に近づくなり「手が使えないの?かわいそうだね。」と言われた。今まで何度も会っているのに急に言われたことに驚き、次に、そんな言葉を使うということはどこかで聞いてきたのだろうと考え深くなった。
私は「そう?そんなことないと思うけど。」と返したら、彼はニヤッとして立ち去ってしまった。
健常者から言われたときには「そんなことないですよ。みなさん、それぞれ大変ですよ。」と言ったら真顔になってしまうのに、ダウン症の方のニヤッとした顔はクールでカッコいい返事の仕方である。
「かわいそう」と人に対して言うことをみんなはどこで覚えてしまうのだろうか。疑問に思い続けていかないといけないと思う一方、ダウン症の彼には新しい返し方をされて、この方が自然だな〜と思ってしまった。それまで、同じ反応ばかりされて、この会話に違和感しか持ってこなかったから、彼なりの面白い返し方に出会ってホッとした。
