働くためのメンテナンス

障がい者がクリエイティブになるには

私は、ずっと今までも、文字を書くこと、文章をつくること、イラストを描くこと、物語をつくることなど、自分の中から表へ出す作業に苦労していた。実は、こういった作業って、考えることに9割、表出するのに1割の力と時間を使っている。文字や絵にして描く時間は1割なのに、そこが難しい。それは、表に出すときに、心も体も、そして周りの環境もいいときじゃないと、うまくできないからだ。

キングコングの西野亮廣さん(Youtube【公式】西野亮廣エンタメ研究所)が「再起動が必要になると時間をロスする」という話をしていた。作品を描き起こすために山小屋にこもった西野さんがわかったことだ。そこでは、以前は、すべての時間にパズルのように隙間なくスケジュールを埋めるほうが効率がいいと思っていたが、たっぷりその作品づくりのためだけに思考を使ったときの方が、ひらめいたときにすぐに取りかかることができるので効率がいい、という話をしていた。

西野亮廣さんは、スケジュールを埋めることがいいんだ、とその忙しさに酔っている人へ向けたメッセージを含めていた。たしかに、そういう人もいるし、私も迷いを消すために、わざわざ忙しくしていた時代もあったなと思った一方で、もう一つ重要なことを考えていた。

「障がい者は、時間を区切らざるをえないことが多い」ということだ。私の場合は、ヘルパーさんが交代で自宅に来るときは、午前中に2、3時間、夕方に2、3時間、夜中に1時間、一人でいる時間をつくっている。それは、私にとって欠かせない時間である一方で、1日に3、4人交代で来るために、最初の「お願いします」と最後の「ありがとうございました」の挨拶を3、4セット行なっている。そして、トイレの時間も実際は決まっている。ヘルパーさんが来るまで我慢できるように、前のヘルパーさんが帰る直前にトイレに行き、次の人が来たら速攻トイレに駆け込むといった感じだ。

毎日、そんな過ごし方をしているため、一極集中して、一人の時間でクリエイティブなことをしなければならない。しかも、一人にならないと、あまり浮かんでこない。西野亮廣さんのように、山小屋にこもることもやりたいとは思っているが、私なら、もう一つ部屋を用意して、ヘルパーさんにそこに待機してもらうだろうか。でも、そこにいると思うだけで、気が散ってしまう。そこは本当に割り切っていくしかない。

他にも、リハビリの時間、病院への通院の時間、ヘルパーとの緊急の連絡のやりとり、ヘルパーのシフト作成、ヘルパーと関係がうまくいかなくなったときの軌道修正など、心が忙しくなる条件が整っている。むしろ、それだけで1日が終わってしまう。仕事を入れて酔いしれることも、うらやましいとさえ思う。

少し話をがそれるが、もし、精神的に安定していない人や、きつい表情や人を焦らす人などが障がいのある方でいた場合、どういう時間を過ごしているのかに注目してほしい。特に、先生や支援者という立場の方なら、なおさらだ。「本人の特性」ばかりに目を向けるより、環境により、その人の思考もつくられているのかもと考えるほうが自然な見方なような気がする。

そういった、すぐには変えられない状況もある。そういう状況にいる人でもクリエイティブになれるにはどうしたらいいか、西野亮廣さんの話を聞いて考えた。「いったん作業から離れると、また同じ勢いの思考に戻るまでに時間がかかる」といった内容を話していたとき、「あー、そのせいだったか」と発見する。

やっぱり今の状況は良くないということに気がついたことで、その状況でも、ここまでやれた私と、支えてくれているヘルパーさんに感謝した。そこから、どうするか?は、まだ答えは出ていない。

「再起動が必要になると時間をロスする」ならば、再起動する時間と労力をかけないために、思いついたことはメモに起こす、やりたいときに迷いなくすぐにやるということは、これまでやってきたので続けていきたい。

あとは、まとまった時間と、安心して表現できる場所の確保。現実的に難しそうな気がする。それはできるときにやったらいいと思うが、「それだけ」を待ってもいられない。

もう少し時間がかかりそうなので、いったん離れてからまた考えよう。あれ、離れてみて、思いつくこともありそうだ。その力をうまく活用できるのではないか。続きは、またいつか。

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