久しぶりにゆっくりしていた昼下がり。ふいに玄関のチャイムがピンポーンっとなった。なんだろうと思いながら、ヘルパーさんがインターホンのカメラをのぞいて「配達のようですよ。」と教えてくれたので、出てもらった。ヘルパーさんが「お届けものですよ〜。」と、ピンクの包み紙に巻かれた大きい箱を持って戻ってきた。だれからの贈り物か、まったく想像ができなかったのだが、宛名を見ると、7、8年前に、ある大学の講演会でご一緒した車椅子のおじさまからだった。おじさまは、北海道の函館に住んでいて、一度お会いしただけなのに、会ったときもとてもやさしく、そのあともお手紙を送ってくださるなど、心の大きい方だ。
ダンボールには手書きのお手紙が添えられていた。私からの年賀状を見て、なつかしく思い、北海道から離れた私に贈り物を送っていただいたようだ。今年は久々に年賀状を再開したので、なんだか嬉しくなった。
プレゼントはなんと、「やきそば弁当 12食分」。なにかの懸賞(けんしょう)に当たった気分で「こ、こんなに〜?!」と、かなりサプライズだ。やきそば弁当は、関西にはなかなか売っていない。UFOやペヤングといったカップやきそばと種類は一緒だが、やきそば弁当は、他のそれとは特別だと思う。なぜなら、やきそばのゆで汁(もどし汁)を使って、中華スープが作れるからだ。やきそば弁当は北海道ならコンビニにも普通に売っているので、しょっちゅう食べないけど、ゆで汁をスープに使えることが当たり前だと思ってきた。ところがどっこい、他のカップやきそばはゆで汁を捨ててしまうと聞いて、驚いた。
函館の車椅子おじさんに、お礼のためにお電話をしたら、「道外の人に送ったら喜ばれるんだわ〜!」と元気な声で返してくださった。長い間、連絡を取り合うこともなかったのに、会ったのがつい最近かのように、いろいろな近況を話してくださった。
いろいろな話の中で、「ドロくさいほうが人間らしい」という言葉が出てきて、なんだか考え深かかった。私は、電話を切ったあとも、人は欲望も多いし、矛盾も多いし、だれでもドロくささがあるんだよなと、自分の人生を少し振り返った。
函館の車椅子おじさんは、「俺は人間関係を大切にすることしかできない」と言っていたけれど、それを大切にできるのが、人生の先輩として尊敬したいし、しなきゃなと身を引き締めた。
またいつかお会いできることを楽しみにしています。