タイトルだけで手に取ってしまった本。
偶然にも、兵庫県出身の方で、兵庫県に住みはじめた私は、勝手にご縁を感じました。たいていの旅の本は、読者にワクワク、ドキドキさせる本が多いですが、この本はタイトルから滲(にじ)み出ているようにゆるさがあっておもしろすぎます。
私は、これまで旅行に行ったとき、いつも「旅の意味」「旅の目的」をしっかり持つようにしてきました。私の場合は、、、車いすで泊まれる宿を探さなければならないし、一緒に行く相手を見つけなければならないし、車いすで交通機関を使えるか調べなくてはならないし、「なければならない」が多かったからです。つまり、「旅をする前の、入念な準備」が必要なのです。
正直、そんなことするのは面倒くさい。よく旅行の計画を立てることが好きな方がいます。その計画って「どこで何を楽しむか」ということだと思います。面倒くさいところというのは、「そもそも、そこにたどり着けるのか?」ということを調べることです。多くの人が使える宿や交通機関が、私に車いすという「車輪」がついていることで使えなくなってしまいます。「どこで何を楽しむか」を考えたところで、車いすで入れないのなら、あきらめるしかありません。
そんなことがあるからこそ、「よっしゃ!人一倍、楽しんでやろうじゃないか!」と意気込んでしまうのです。それは、悪いことではありませんが、狭い選択肢の中で、心を奮い立たせていないとできないことなので、ハードルは高いと思います。もっと、玄関で靴を履いて、「ちょっと行ってくる!」と言えるような、ハードルの低い旅をしたいものです。
そう思っていたところに、「旅はときどき奇妙な匂いがする」というタイトルの本を見つけました。
「私には、もっともっと本格的でない旅が必要だ。」
そんな筆者の文を読んで、じっくり読もうと決めました。読んでいくと、じっくり読もうと決める必要がないくらい、かしこまらなくてもいい旅の本。でも、どこか自分との共通点が感じられるので、手放したくない本。
「右足が辛く感じるほど、ピリピリする」という原因不明の症状を忘れるために、日常の景色の中の「非日常」を探していくが、そううまくはいかないという旅のエッセイ。
どこまでも、ゆるくて、いつでも読書を中断できるし、始めることもできます。
最近、ちょっと気になる作家です。