私と同じ障がいの「脳性まひ」を持っている、寺田ユースケさんの本を読んだ。私は、子どもの頃から、障がいのある人が書いた本をあまり読んでこなかった。なんでかな〜?と理由を考えてみる。特に、子どもの頃は、「本を書くことができるほどの障がい者の生活は、私の生活とはぜんぜん違う!と思っていた。あの人のようになれるはずがないと思ってきた。
もし、自分の家族や友人に障がいのある人がいて、何とかして元気づけたいと思った方は、「障がい者が書いた本」を無理に勧めるのではなく、そっと静かに、「こういう本あったよ〜」と置いておく方がいいと思う。そして、すぐ読んでくれることを期待してはいけない。読むタイミングは本人が決めることだから。そんな私は、乙武さんの「五体不満足」を最後まで読んだことがない。何かのきっかけでまた読みたくなったときがいいタイミングだと思う。
寺田ユースケさんが書いた「車いすホスト。」は、私が20年以上前の子どもだった頃に出会いたかった本だった。「寺田家TV」というYoutubeをパートナー(奥さん)と一緒に作っている。いろいろな障がいやマイノリティーの経験をしている方が、明るく赤裸々にトークしていておもしろい。私は、Youtubeを知ってから書籍を買った。
まず、「車イスホスト。」というタイトルに惹かれた。同じ障がいの人がどんなことを書いているのだろうという好奇心が先だった。子どももサラサラと読めそうなほど、わかりやすい文章だった。ホストという仕事について、自身の心の変化も合わせて優しい言葉で書いてあるので、子どもにもオススメだと思う。
障がい者の本は、自分の幼少期からこれまでの経験を自身で書いているだけのものが多いが、寺田ユースケさんの本の場合、親や、障がい者を雇ったホストのオーナーの声も書かれている。障がいのある親御さんの抱える悩みや、障がいのある人を会社に雇う人の本音も垣間見ることができると思う。この本を題材に、お互いの思いを一緒に共有し、話をしてみるのもいいかもしれない。
私は、寺田ユースケさんのYoutubeを見ても、本を読んでも、「ユースケさん、めっちゃ、カッコわるいじゃん(笑)」と思ってしまう。告白してきた女の子に、わざと遠ざける態度をとって、それっきりになったり、そうしてしまったことにズルズルと気持ちを引きずっていたり…そういう似たようなことがなんどもあったり…(笑)。どうなっちゃっているのさ、と突っ込みたくなることが満載だ。
そのことを隠さずに、堂々とされていることが尊敬する。車いすであることを笑いにしようとお笑いの道に進んだり、逆に、車いすであることを笑いにされてキレる時期もあったり、それがどうしてなのかを考えて、読み進めるとおもしろかった。ユースケさんとは違う経験をしているが、私の経験からも「障がい」についてどういう風に感じるかは、出会った人によって作られていくと思う。
私がこの本を読んで大切だと思ったことは、「障がい者は、健常者よりも人一倍努力しなければ勝てない、認められない」と思う障がい者側の「必ず経験する葛藤」についてである。
そのようなことを、子どもにもわかりやすく、コミカルに描いていく寺田ユースケさん。生まれつきの障がい者だからこそ、感じる社会の隔たりや、そこで生きる人の葛藤を改めて思い出し、彼の悩みっぱなし精神に突っ込みながら読める。そして、「自分はこんなふうになれない」のではなく、「悩みっぱなしでも、進めばいいんだ」と思わせてくれる。