ホームヘルパーさんを利用し始めて、15年くらいになります。これまで100人くらいの方とお会いしてきました。100人いれば100通りの付き合い方があるように、どれだけ経験をしても、うまくいかないことはたくさんあります。
今回は、「もし、介助(ヘルパーさんによる介助)を利用するとしたら、どんなことを経験するか」を私の経験からまとめていきたいと思います。
読み進めるまえに…
あらゆるタイプによって感じ方が違います
介助を利用する中で感じる良いこと、困ることは、主に二つの種類の要因によって異なってきます。
一つは、ご自身の障がいを負ったタイミングや障がいの種類、誰と住んでいるか、これまで何を大切にしてきたか?といった自分に関わること。
二つ目は、ヘルパーさんの仕事に対する考えや経験値、障がい者との出会いの経験、ヘルパーさんの性格といったヘルパーさんに関わること。
今回は、ご自身の障がいのことやライフスタイルのいくつかのタイプを挙げて、ヘルパーさんを利用することになったときや利用しているときの経験を想像してみたいと思います。
ちなみに、私が経験していないことは、いろいろな方のお話を聞いて記憶しているかぎりのことを書いています。そのため、間違っていたり、ニュアンスが違うなと思いましたら、コメントをいただけると嬉しいです。

生まれつき・子どものときの障がい
/大人になって途中からの障がい
どのタイミングで障がいを負ったかは、かなり大切な違いの一つ。
他人に自分のことを頼むということに、どれだけハードルを感じるかも違う。どちらかの方がハードルを感じない・感じるという簡単な比較はできない。
生まれつき・子どものときのタイミングの場合
幼いころから障がいを負っている場合は、最初は、家族に介助をしてもらっている人が多い。思春期になってくると、親に介助をしてもらうことが苦痛になってきたり、同年代の健常者と自分を比べて「自分は何もできない」と思ってしまう。
その時期に「他人に助けてもらうこと」についてどう教わってきたかが、重要なターニングポイントになってくる。
もし、「自分のことは時間がかかっても自分でやるべき」と教えられた場合、他人に介助をお願いすることに抵抗を感じやすい。私個人(みちこ)はこのタイプで、外出途中で缶ジュースを買うことですら「買っていいですか?」と聞いていたものである。何もかも許可制の集団生活をしていたために、癖がついてしまっていた。
一方、もし、「できないところは、周りに手伝ってもらって、できるところに時間とパワーを使った方がいい」と教えられた場合、ヘルパーさんを初めて利用するときも、ためらいなく頼みやすい。
長年、自分の体と付き合っているので、自分のできないところや手伝いが必要なところは、知っている人が多いと思う。そこが強みである。普段から周りに頼んで、友人や先生、家族などとコミュニケーションを取っていれば、ヘルパーさんへの依頼もそんなにハードルが高くない。
ただ、これまで友人づきあいで楽しくやってきた人は、ヘルパーさんは友人と比べると「心理的な壁を感じやすい」「時間が決まっている」「相性が合わない」と思うことが多いだろう。ここで割り切れるかがキーとなる。
大人になってから途中のタイミングの場合
これまでは健常の体だったのにも関わらず、事故や病気などで障がいを負ってしまった場合は、障がいを負う前と後のギャップにショックを受けるだろう。
私個人的に(みちこ)は、生まれつきのために、障がいのある体しか知らないので、その体そのものが自分だという認識だ。しかし、普通に歩き、生活をしていた状態から、いきなり動けない・動きづらい体になった場合、その体の使い方から学ばなければならないと思う。車いすが必要な場合は、「車いす=障がいで何もできない」と思い込み、そこからポジティブになるまでに時間がかかる人もいる。(きっとすんなり受け入れる人もいる。)
いろいろなギャップのうちの一つに「トイレ」がある。生きるためにかなり必要なことで、毎日しなければならない。自然にトイレをしていた状態が、何か道具を使ったり、時間をかけたり、他人の手を借りたりしないとできない状態になる。外出したくても、どこに車いすトイレ(障がい者用トイレ・多目的トイレ)があるのか、探しておかないと心配でしかたがない。
いろいろなギャップを受け入れてきたあとに、ようやくヘルパーさんを利用するという人も多いのではないかと思う。実際には、まだまだ葛藤中のことがあったとしても、家族以外の人のサポートがあった方が良いことに気がついて、トライしてみる。
ヘルパーの利用の経験は、ヘルパー制度を利用するために役所に行くことから始まる。窓口の担当者によって態度が違うため、中には淡々と事務的な態度であったり、過度に会話してきたりと、どのタイプの人と出会うかは記憶に残りやすいかもしれない。
ヘルパー事業所の責任者やヘルパーさんとの最初の出会いでは、自分で会話ができる人はこれまでの社会人経験があるため、やりとりは問題ないかもしれないが、これまで他人にさらけ出したことのないことまで伝えることに苦労するかもしれない。
また、男性ヘルパーは最近は増えてきているが、まだ女性の方が多く、ご自身が男性で、ヘルパーを同性にしてほしい場合はあらかじめ伝えておくことが必要である。
ご自身がコミュニケーションが取れる人なら、ヘルパーさんに気遣いもできると思うが、のちのち、いろいろなヘルパーさんと出会ったり、少し回数を重ねて慣れていったりすると、その気遣いが少ししんどいなと思うことが出てくるかもしれない。
そういうときは、友人や家族に心境を伝えた上で、ときに愚痴ったり、ストレス発散したりできると良いと思う。
日常の一部分(短い時間)の介助
/日常のほとんど(長い時間)の介助
必要な介助の内容は、障がいの内容や程度によって異なる。
大きく分けると、家事だけ、入浴の見守りや背中洗いだけ、外出するときだけなどといったように、短時間で終わってしまう人と、日常のほとんどの24時間に近いくらい必要な人とがいる。
短い時間・週に何日かくらいの介助
一人でできることが多かったり、家族と一緒に住んでいる人は、たとえば1日に2〜4時間、週に何日間といった短い時間で、ヘルパーさんに来てもらっている。いわゆるピンポイントのみ利用する方法がある。
その場合、特定のヘルパーさんに限らずにできることが多いため、ヘルパー事業所の方針や人手しだいでは、いろいろなヘルパーさんが代わる代わる派遣されることも多い。(普通は、いきなり打ち合わせもなく新しい人は来ない。)
利用する側としては、ヘルパーの体制について、いろいろな感じ方があると思う。
たとえば、
- 引き継ぎがされているならOKと思う人
- その都度その人に伝えるから、必要な時間には当ててほしいと思う人
- 短い時間だから、その時間だけ頑張ればいいやと思う人
- 家族もいるので、あまりいろいろな人が来ると困ると思う人
- 特定の人だけに来てほしいと思う人
また、正直言うと、こうであったらいいのになと思うこともある。
たとえば、
- 必要のないときは、自由にキャンセルしたい
- あまり過剰な態度は取らないでほしい
(かなり敬語、かなりカジュアルなど) - 決められたこと(やってほしいと言ったこと)だけやってほしい
- 最低限のマナーはあってほしい
他人が自宅に入って、自分のプライベートなことをやってもらうのは、最初はありがたいという思いがいっぱいでも、ストレスを知らないうちに溜めることもある。そのために、ストレスを溜めるぐらいなら、なんとか自分で頑張ってやって、ヘルパーはキャンセルしようと思ってしまうことさえある。
無理に利用し続けることもないが、同じようにヘルパー制度を利用している人を見つけて、お互いにどうやっているか聞いてみることが一番良い。
どこか一部でもヘルパーさんに依頼できたら、生活全体が楽になることはたくさんある。そのように、生活の全体と自身の体力と、本当は節約した体力で何をしたいのかを考えてみると、ヘルパーさんの活用方法が見えてくるかもしれない。
長時間・ほぼ毎日介助が必要
日常生活のトイレ・入浴、家事、着替え、食事介助、寝返り介助などが必要な場合、24時間に近いくらい、ヘルパーさんと一緒にいることになる。ヘルパーさんは同じ人がずっといるのではなく、1日に2、3人の交代制が普通である。
1ヶ月にすると、少なくて5人、普通は10数人、多くて30人くらいのヘルパーさんが来る。その都度、人に合わせて気を遣っていたら、日常生活を送るだけでクタクタである。
また介助が必要であればあるほど、身体的な介助も多く、赤の他人のヘルパーさんと体を付き合わせていかなければならない。ヘルパーさんにも負担がある一方、利用者にとっては、すべてのヘルパーさんと毎日のように付き合っていかなければならない。
何度も入っていると、介助に慣れるヘルパーさんが出てくる。そうなると、日常生活がうんと楽になっていく。飲み物を飲むときのコップの角度や、体調が悪いときの体の支え方、食事の好みなどがわかると、最初は1から10を伝えていたのが、3だけ伝えたらスムーズにやってくれるようになる。
実は、そこまでにいくまでが、忍耐強さとの戦いである。もちろん、ヘルパーさんの協力なしには実現できない。ヘルパーさんとスムーズな介助関係を築くには、こんな考えやヘルパーさんが必要である。
- 言わなくてもわかってくれるとは思わず、伝え続ける
- 100%の質を求めるのではなく、答えようとしてくださっているかが大切
- 他のヘルパーさんと比べることは、できるだけ避ける
- ヘルパーさんの良いところは、できるかぎり言葉に出す
- お気に入りのヘルパーさんは作らない(えこひいきはしない)
- 自分のすべてを言わなくて良い(知られたくないことはそのまま言わないで良い)
- ヘルパーさんのことを、ねほりはほり聞かない
- 一人でいる時間も確保する
- ヘルパーさんが待機できる部屋を用意しておく(できれば)
まだまだあるかもしれないが、この辺で。長時間のヘルパーさんとの付き合いの場合は、心も体もリラックスできる関係性を作ることを優先にしたほうが良い。
一人暮らし/同居人がいる
一人暮らしと、家族や同居人がいる暮らしとでは、ヘルパーさんを利用するときに考えることが異なる。
一人暮らしの場合
- メリット:ヘルパーさんとの関係だけに集中すれば良い
- メリット:部屋の掃除や食事の準備において、「ヘルパーは本人の分しかやってはいけない」という規則があるため、そこを心配する必要がない
- デメリット:誰もいないため、必要な時間にヘルパーさんが来られなくなったら困ってしまう
- デメリット:危険なヘルパーさんが来た場合、二人きりで密室のため、何かあった場合に対応できない
同居人がいる暮らしの場合
- メリット:ヘルパーが来られない、危険なヘルパーさんが来た場合に、同居人にも助けを求めることができる
- メリット:ヘルパーさんと二人きりで関係が煮詰まってしまった場合に、同居人が空気を和ませてくれる場合がある
- デメリット:ヘルパーさんは「本人以外のことをしてはならない」ために、家事を頼みづらい
- デメリット:同居人とヘルパーさんの相性が悪かった場合は、かなり気まずい雰囲気になる
身体介助が必要/必要ではない
日本人の多くは、日常的に他人の体を触るということがないためか、身体介助はされる方もする方も負担が大きい。もし、日常的にハグをする文化にいれば、お互いにちょうど良い心理的な距離感で、身体を触ることができるのだろうか。
また、介護は腰が痛くなると言われるように、確かに痛くなりやすい場面が多くなる。一方で、ヘルパーさん自身が自分の体の特徴を知らずに、無理な姿勢になっていたり、「頑張る精神」で無理な体勢のまま、やり続けたりしてしまう。
身体介助は、利用者とヘルパーさんの両方が楽だと思わないと、お互いに楽ではない。どちらかが苦しい場合は、一方も苦しんでいることが多い。
そのように、心理的な負担と、身体的な負担の両方があるため、身体介助を必要とする場合、そこからもストレスがかかってしまう。
自分で体を動かすことができない人は、車いすに座る位置でさえも、うまく決まらないとイライラしてしまう。なぜなら、体が痛くなってしまうからだ。
その座る姿勢を直すために、ヘルパーさんに伝えようにも、ヘルパーさん自身はその違和感を感じることができないために、100%伝わるには、かなりの時間と労力が必要になる。
痛い上に、伝えてもうまく伝わらなければ、イライラはさらに増してしまう。もし、そうなった場合は、ヘルパーさんにかなり頑張ってもらい、良いポイントをついたら、「ここだよ」とすぐに教えていこう。
もし、それでも難しければ、リハビリの先生などに伝えてもらうのも、有力な方法である。
人と話すことは苦じゃない/人と話すことが苦手
ヘルパーさんに頼まないといけない場合は、伝えないと始まらない。障がいがあるかどうか以前に、人と話すことに苦労しない人もいれば、苦手な人もいる。それぞれの状況で意識したら楽になる方法を想像して書いてみる。
人と話すことを苦に感じない人
- 最初から長く説明するのではなく、「まずやってほしいことは」「そのあとに」といったように、区切りながら説明をすると伝わりやすい
- 場が和むような雑談をすると、ヘルパーさん側もその後の仕事の指示を聞き取りやすくなる
- あまりしゃべりすぎてしまうと、ヘルパーさんの勤務時間が過ぎることがあるので要注意
人と話すことに苦労する人
- 介助をしてほしいこと、注意してほしいことだけは必ず伝えられるようにしておく(言いづらかったら、紙に書いて、必要に応じて見せる)
- おはようございます、こんにちは、さようなら、ありがとうございます、だけは言うようにする
- 天気の話をして、場の空気を和ませてみる
- 無理しすぎは禁物。話すのが得意ではないことを伝えるのも手。
仕事をしたことがある/仕事をしたことがあまりない
ヘルパーさんとの関係は、利用者にとっては「仕事としてくる人」である。
利用する側が、他の仕事をしたことがあったり、今も会社などで仕事をしていたりする場合、ヘルパーさんのことを「仕事人としてきちんとしているか」という目で見てしまう。そうすると、玄関に入るところから「靴をきれいに並べているか」「静かに入ってきているか」「明るく振舞っているか」といったところが気になってくる。
利用者自身が仕事をしたことがないと、ヘルパーさんに対して「協力したい気持ちで来てくれているから」と言いたいことがあっても遠慮したり、一方で、買い物代行で大量の水を買わせたりなどと無理なことを押し付けてしまう人もいる。(仕事をしていないからではない場合もあるが。)
また、ヘルパーさんと長く付き合っていくほど、雑談や個人的な話をすることもある。ヘルパーとより良い関係づくりにはとても大切なことである。ただ、それがいきすぎてしまうと、仕事関係以上の友人などの関係になり、ときにお互いの都合の良いように甘えてしまうこともある。
もし、仲良くなったとしても、介助のためにヘルパーさんに来てもらっているときだけは、呼び名や言葉遣いに気をつけるなど、意識をしていったほうがのちのちのために良いと思う。
逆に、ヘルパーさんを厳しい目で見過ぎてしまうと、会社の上司のような気分になってしまうため、生活をしたいだけだから、そんなに神経質にならないほうが良い。仕事として「こういうことはしてもらいたい」と伝えたのなら、あとはヘルパーさん本人や事業所の責任者に任せてみよう。
まとめ
さて、今回は、もしもヘルパーさんを利用するとした場合の、いろいろな視点からタイプ別に遭遇しやすい経験を想像してみました。
ヘルパーさんとの関わり方は、高齢者を対象とした介護保険制度、障害者を対象にした障害者総合支援法といった制度の仕組みによっても、影響されます。
今回は、みなさんの生活の仕方や考え方、障がいの程度や障がいを負うタイミングから、ヘルパーさんを利用することになったときに考えるかもしれないことを挙げてみました。
もっとこういうことがある、ここは経験したことがあるなどの経験談や、まだ介助を必要としていない方のご感想などありましたら、いただけると嬉しいです。
それでは、長文を読んでいただきありがとうございました。
では、また。